7.舞踏会
ダルタニャンが銃士見習いとして初出勤した第12話より。愛のバッキンガム一人劇場。
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ああ、今日はなんと素晴らしい日なのだろうか。
この暗闇の先、その部屋にたどり着いたら、あの方がいる。その名前を声高らかに呼べるのだ。
先ほどは、あんなに近くにあの方がいたのに。リシュリューや陛下の目が光っていたため、うかつにあの方に近付けなかったのだ。
そんな生殺し状態だったためか、段々と舞踏会場にいる人間すべてが、あの方に見えてきてしまったではないか。ミラボー夫人も、リシュリューもだ。くそっ。
さっきのあのオウムすら、あの方に見えてしまっていたのだ。そうだ、私は病気なのだ、恋の病に蝕まれているのだ!
ふと、足を止める。
周りには、ただ闇がある。しかし、道は繋がっている。あの方の元へ!
……人の気配はない。
もう我慢できない。
一度だけ、ここで声高らかに叫ぼう、あの方の名前を!
「アンヌ!!」
……心地よい。なんて心地よい響きだろう。アンヌ、アンヌアンヌ。心の中で繰り返しても心地よいが、声に出すとまた違う。
一度口に出すと、何度も叫びたくなってしまう。ああ!
「アンヌ!」
「アンヌ!アンヌアンヌ!ああ、アンヌ!」
鼓動が速まり、胸が高鳴る。息ができない。
名前を叫んだだけでこうなのだ。この後、二人きりでお会いするというのに!この腕に、あなたを抱きしめるというのに!
そうしたら、私はどうなってしまうのか。果たして正気でいられるのか。あの方を絞め殺してしまわないだろうか。
「アンヌ!」
もう一度叫び、私は走り出す。愛しいアンヌの元へ。
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色んな意味で危ないバッキン物語でした。なんといいますか、しつこくてぶっ飛んでる公爵様を書きたかったのです。
ミラボー夫人に騙されて、秘密の通路を通っている時です。
侯爵様はあの通路の中、一人アンヌの名前をしつこく連呼していたんでしょうか。
…実際(?)は、ただひたすら全力ダッシュ(汗ダクダク)だったのだと思います。
≪6.約束 8.闘い(バトル)≫