2.死
第50話より。その時、本当は……。

全力疾走で走る俺は、丁度良いロープを見つけた。それを、手に取り、伸ばしていく。
鉄仮面たちがこちらにやってくるのを視界の隅で感じ取り、俺は壁に足をかけた。
俊敏に行け、けれども落ち着くんだ。俺は壁を蹴りながら、少しずつ下へ向かっていく。
あと少し、あと少しで林の下に降りられるぞ。そう思ったときだ。
感覚的に「ロープの力が抜けた」と思った。その直後、ロープが切れた事を理解する。
ここは空中だ。支えるものがなくなってはどうしようもない。
壁だ、壁が俺の下にいるんだ!世界はたった今生まれ変わったんだよ!
俺は無理やりな考えを抱いて、壁を走ることにした。足を動かす。この15年の人生の中で、ここまでせわしなく足を動かしたことが……いや、あったかもしれないけど、とにかく一生懸命走る。走るんだ。
目の前に大木が迫ってきた。よし、飛び込もう。俺は泳ぐぞ。空を泳ぐんだ。
壁を蹴り、平泳ぎの姿勢で木の中へ飛び込んだ。このままだと地面に落下してしまう。何か、何かつかまるものはないのか!?
顔中が葉っぱだらけになり、目も開けていられない。枝や葉っぱが、俺の顔をこすって痛いが、それどころではない。
生まれ変わったハズもない世界の重力は、俺を下へ下へ導いていく。ええい、何か、何か。
その時、枝につかまることができたようで、気がついたら俺の体はゆらゆらと上下に揺れていた。
枝がゆらゆら、俺もゆらゆら。
「死んだか?」
「わからん、しかし恐らく」
上からそんな声が聞こえた気がした。俺の事だろう。
悪人どもめ。こんな事で死ぬわけないだろ。ちょっと、必死だったけどさ。
ひとまず、ジャンとコンスタンスのいるところへ行こう。
二人はどこへ行ったのか聞いていないけど、俺のコンスタンスを想う気持ちさえあれば、きっと辿り着けるさ。
まずは、最初にこの島に来た時に上った、あの鳥の巣のところへ行ってみるぞ!

プチダルタニャン劇場です。
ダルタニャン、こんなにせわしく考えながら走っていただなんて(笑)。
コレをお題2にした理由は、「死んだか?」というマンソンおじさんのセリフと、ダルタニャンが"必死"だった事です。
≪1.思い(決意) 3.首飾り≫